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ノルウェイの森

『ノルウェイの森』を再読した。

何年ぶりだったか。
びっくりするくらい内容忘れていた。
そしておもしろかった。
最後(※)には涙が出て、それもびっくりした。

※レイ子さんと別れるところ。



『ノルウェイの森』の主人公が暮らす日の丸の揚がる学生寮にじつは泊まったことがある。
もう30年以上前の話だけれど、当時東京の大学に通っていた兄がその寮に住んでいたのだ。
どういうなりゆきだったか、兄を頼りに東京に行ってその寮に泊めてもらったのだった。
その頃、家は仙台にあって、僕は中学生になったかならないかの年齢だった。

小説にあるとおり、ちょっと右寄りの出自を持つらしいその寮では朝に日の丸の掲揚がおこなわれていて、たしかその情景も見たように思う。子供の僕にとってもなにやらちょっと変に感じられるその寮全体の空気が不思議な印象として今も残っている。
兄の部屋は二人部屋で、たしか二段ベッドがあった。
簡単に例えれば新米の兵隊が住むようないたって簡素なつくりの寮だった。
兄がそこに入寮するいきさつは、父方の伯母の紹介であった。
伯母と寮の経営者との間になんらかのつながりがあったのだろうか。
その名古屋に住む伯母が兄に寮について説明していたシーンも僕はうっすらと記憶している。
(どうしてそんなことを憶えているのか、なんでも忘れてしまう僕としてはふしぎなことだ。)
寮のとなりには田中角栄邸があった。
夜間の外出などには当時も多少の制約があったようで、夜に寮を抜け出て晩飯を食べに出かけるときもちょっとした緊張感があったような気がする。中庭の植え込みの隙間からこっそり出入りしたような記憶もあるが、そのへんははっきりしない。
今思えば、もしかすると、僕が泊まること自体じつは規律に違反していたんじゃなかろうか。(小説を読み直していてそう思った)
見つかったら怒られるんじゃないかといった背徳観とスリルが僕に強い印象を与えたのかも知れない。
その夜、兄がうまいビーフシチューの店があるんだといって、とんでもなく長い距離を歩かされて、たどり着いたら店は定休日だった。今でもそのガッカリ気分ははっきりと思い出せる。父の影響で美食指向のある僕を喜ばせようという兄の計画の頓挫は兄にとってもガッカリだったことだろう。結局、僕らはパッとしない近くのファミレスのようなところでハンバーグセットを食べた。

兄は、道々或るラーメン店を指し示し、この店は24時間休むことがないのだといった話をしてくれた。
その頃には24時間営業と云った形態はまだめずらしく、僕は存在を知らなかった。
いったい店主はいつ眠るのだろうかと、大都会の神秘に驚嘆したものだ。

兄の寮と『ノルウェイの森』の寮が同じだと気付いたのは、それから10年ほど経って『ノルウェイの森』が大ブームとなった頃だった。あまりに流行ったので敬遠して実際に読んだのは1、2年経ってからのことだったか。


来年、『ノルウェイの森』の映画が公開される。
配役は、ちょっと男があまりにみんな細面ばっかりなんじゃないかと思うが(永沢さんはもっとガッチリしてるんじゃないか キズキはいいけど)、松山ケンイチと菊地凛子はいいかなと。
トラン・アン・ユン監督好きだから期待。


『風の歌を聴け』の映画をやっぱりずっと昔に観たけれど、なんだかおもしろかったような記憶がある。
by sakura-blend | 2009-12-24 04:19 | よしなしごと
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